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武蔵野市書店探訪【吉祥寺編2】

街の文化発信、その拠点はもちろん書店です。武蔵野市には魅力的な書店がいっぱい。このコーナーでは、アニメノマンガノムサシノ独自の視点や、書店さんから聞いた最新情報や意外な売れ筋など、マンガ・アニメの今をうかがうことのできる情報を多方面からお届けします。

■ブックファーストアトレ吉祥寺店

吉祥寺の書店の中で、もっともアクセスが良いのが、アトレ本館口を出てすぐにある「ブックファーストアトレ吉祥寺店」です。
このお店は、大変古くから吉祥寺にある書店です。ただ、現在のブックファーストになったのは2008年から。それ以前は国鉄(現JR各社)系列の「弘栄堂書店吉祥寺店」が入っていました。この弘栄堂書店は、現在のアトレ吉祥寺(本館)が「吉祥寺ロンロン」として開店した1969年からありました。ロンロン(アトレ)が国鉄(JR)グループが運営する施設だったので、書店も系列のお店が入っていたというわけです。
ロンロン開店当時の吉祥寺では、街全体の再開発が進んでいました。吉祥寺通りや吉祥寺大通りの整備、サンロードやダイヤ街のアーケード化、近鉄(現ヨドバシ吉祥寺)、伊勢丹(現コピス吉祥寺)、東急百貨店、パルコの開店など、1980年頃まで続いたこの再開発で、現在の吉祥寺の街が形作られました。中央線が高架化されたのもこの頃です。
国鉄は、高架化でできた線路下のスペースに商店街である吉祥寺ロンロンを開店させ、当時としては最先端の駅直結ショッピングモールとなります。ロンロンは、他のデパートなどと共に、吉祥寺の街を形作る重要な商業施設となりました。
弘栄堂は、前述の通り2008年に閉店しましたが、別に販売不振だったから閉店したわけではありません。逆に、最盛期には「日本一雑誌が売れる店」とまで言われた伝説的な書店でした。運営母体の方針で全国的な書店事業を縮小することになり、その一環として閉店しただけです。
そうした「超人気店」をわずか1週間で引き継いだのが、現在のブックファーストアトレ吉祥寺店でした。あまりに早かったので書店が「交代」したことに気づかなかった人も多かったというのが、当時の感覚でした。

伝統の書店を引き継いだブックファーストアトレ吉祥寺店は、弘栄堂以来の伝統を守り、多くの人のためにヒット作を豊富に取りそろえ、なおかつ「ちょっと難しい」専門書なども幅広く揃える書店です。雑誌が勢いを失って久しいですが、ブックファーストアトレ吉祥寺店では今でも雑誌に力を入れているお店です。
ただ、そうしたお店ですが、最近少し、いや大きな変化がありました。弘栄堂時代から、この書店はコミックコーナーが狭く、立地の性格的なものもあって、いわゆる「売れ線」以外の品揃えが弱いという傾向がありました。弘栄堂時代は、殿様商売が通用していたと言うよりも「殿様商売をすることが義務づけられていた」ようなお店でしたので、仕方がないことでした。
しかし、先頃行われたレイアウト変更で、元々駅から遠い方にあったコミックコーナーを、駅近くの壁側に移動し、販売面積もかなり広くなりました。しかも、通路に近い方から壁に近い「奥」に進むにつれ、だんだんマニアックな品揃えになっていくという、大変考えられた配置。書店の魅力は「新しい世界に出会う」ことにありますが、それを目指した方針といえるでしょう。

ただし、単純に「売れ線だけを集めた」書店になってしまったわけではないのが吉祥寺の書店であるところ。雑誌やベストセラーなどの「軽い」ものは通路側にあり、奥にいくほど高度な内容の本が増えるところは、コミックス以外の書籍でも同じです。
また、これも伝統の「ご当地本」に力を入れているところも変わっていません。
レイアウト変更により、むしろ奥の深さを増したブックファーストアトレ吉祥寺店。50年以上前から、吉祥寺で「まず初めに覗く書店」であるという役割を、今も果たしているお店です。「むしろ、雑誌を間口に置き、その次に各ジャンルの単行本があるという、「伝統的な書店」スタイルを楽しめる、今となっては貴重なお店といえるかもしれません。

【ブックファーストアトレ吉祥寺店】
公式サイト:
http://www.book1st.net/shops/tok_b20.html
営業時間:
10:00〜21:00(不定休)(2022年12月現在)
住所:東京都武蔵野市吉祥寺南町1−1−24 アトレ吉祥寺2階4番街


■ブックファーストアトレ吉祥寺東館店

吉祥寺にはもう一軒、ブックファーストがあります。それが「ブックファーストアトレ吉祥寺東館店」です。

「吉祥寺店」が、改札の目の前という立地から、一般的な「売れ線」中心のラインナップ中心になる「特徴が無いのが特徴」というべき書店なのに対し、こちらのお店は少し変わった「特徴的」な書店となっています。

吉祥寺のアトレは、前進のロンロン時代から本館と別館(現アトレ吉祥寺東館。ロンロン時代は「ヤング館」→「エキサイツ館」)に分かれていました。メインの改札が本館側なので、東館は比較的落ち着いた雰囲気。どちらかといえば話題の本を買いに行く、という性格の吉祥寺店に対して、東館店はじっくり読みたい本を探す用途のお店です。

ブックファーストアトレ吉祥寺東館店は、ロンロンがアトレに変わった2010年頃に開店しました。アトレの方針として、このフロアを「書店とカフェ」の場所にしたいというものがあったのかもしれませんが、賑やかな本館に対し、東館ではじっくりと滞在できる雰囲気があります。
東館店も、それに合わせて当初はコミックと文庫本が主体でした。本を買って、喫茶店でゆっくり読むスタイルが想定されていたのです。しかし、実際に開店してみると、実はビジネスユースや学生層のお客さんが意外に多く、現在では一般書や文房具の品揃えも充実した店舗となっています。

【ブックファーストアトレ吉祥寺東館店
公式サイト:
http://www.book1st.net/shops/tok_b22.html
営業時間:
10:00〜22:00(不定休)(2022年12月現在)
住所:東京都武蔵野市吉祥寺南町1−1−24アトレ吉祥寺東館2階


■紀伊國屋書店 吉祥寺東急店

紀伊國屋書店は、1927年に新宿で創業(場所は現在の新宿本店と同じ)。東京の書店としては、現在では随一の名門です。そんな紀伊國屋書店が吉祥寺にもあります。「紀伊國屋書店 吉祥寺東急店」です。
紀伊國屋書店 吉祥寺東急店の開店は入居している東急百貨店吉祥寺店と同時。つまり、1974年から。吉祥寺の書店としても、今や最も古い老舗の書店です。
歴史が古いだけではなく、紀伊國屋書店 吉祥寺東急店は、東急百貨店吉祥寺店と同じく、強い個性があります。それは「高級感」です。
そもそも、紀伊國屋書店は、1927年に新宿で創業した当時は新興書店でした。そのため、他の書店が扱っていた雑誌などが置けず、文芸誌、文学書や学術書などを中心とした棚作りをして、他の書店との差別化を図りました。その結果、文化発信の中心地としての存在感が高まり、現在に続く名門となったのです。
東急百貨店吉祥寺店も、吉祥寺では最も高級志向の強いデパートです。今や吉祥寺唯一のデパートとなったこの店舗は、同時期に開店した近鉄百貨店東京店(2001年閉店 現ヨドバシカメラマルチメディア吉祥寺)が大衆化路線を推し進めたのとは逆に、いわゆる「百貨店」スタイルを守り続けました。結果として、他のデパートやファッションビルとの棲み分けが生まれ、今に続く「吉祥寺の高級面を受け持つデパート」となっていました。

こうした歴史から、紀伊國屋書店 吉祥寺東急店は、長らく「高級デパートに来るお客さんが好む店」という、非常に個性的な書店でした。中心は専門書や文芸書。または趣味の本。雑誌も文芸誌や『婦人画報』などの婦人誌など、いかにも、という感じのアイテムがよく売れる店だったのです。
そのため、以前はコミックコーナーも狭く、デパートにやってくる親子連れに人気がある子供向けの漫画が売上の多くを占め、とりわけ幼児から小学校低学年向けが人気の中心でした。他には、小中学校受験関連の書籍もよく動くそうです。

そんな紀伊國屋書店 吉祥寺東急店にも、近年変化が現れています。元々人気のある文芸書、とくに時代・歴史小説コーナーなどは変わらぬ存在感を放っていますが、時代の変化に合わせ、コミックコーナーが拡充されているのです。
ただ、それでも紀伊國屋書店、そして東急の「伝統」は変わらず残っており、正統派の少女・女性向けコミックなど、比較的「堅め」のアイテムに存在感があります。ライトノベルも同じく、「ラノベ」というよりも「ジュブナイル」系が目立ちます。
今後も、新しい時代に合わせ、変化を続けていく紀伊國屋書店 吉祥寺東急店。これから、どのような「個性」へと変わっていくのかを見続けることも、書店を訪れる楽しみのひとつ。ぜひ、そうした書店探索の探訪先として、通ってみたい店舗です。

【紀伊國屋書店 吉祥寺東急店】
公式サイト:
https://store.kinokuniya.co.jp/store/kichijoji-tokyu-store/
営業時間:10:00〜20:00(2022年12月現在)
住所:東京都 武蔵野市 吉祥寺本町2-3-1 東急百貨店吉祥寺店 8F