アニメノマンガノムサシノ

CREATOR INTRVIEW クリエイターインタビュー CREATOR INTRVIEW クリエイターインタビュー

『妖刀伝』ヤマサキオサム監督メールインタビュー

来月2月11・12日に迫った「アニマン祭 J.C.STAFFの歴史を作った傑作たち」で上映される『妖刀伝 劇場版』。
この上映会は『妖刀伝 劇場版』のデジタルリマスター版の初上映となります。
J.C.STAFFの歴史の始まりとOVAの時代を切り開いた本作。その上映を記念して、監督をつとめられたヤマサキオサム(山崎理)さんに、メールインタビューにてお話を伺いました。

©フライングドッグ

——お忙しい中本当にありがとうございます。まず、デジタルリマスター版初上映となる『妖刀伝』への想いとJ.C.STAFFとの関わりを教えて下さい。

ヤマサキオサム(以下:ヤマサキ):『妖刀伝』の製作プロデューサーだったフライングドッグ(旧・日本ビクター)の小松さんから、昨年の夏にデジタルリマスターによる作品保存のご連絡をいただき、素直に驚きと喜びがありました。

ニュースにもなっていましたが、東京現像所が告知していたように、2023年は多くのフィルム作品が廃棄される年となってしまいました。

監督や脚本家が存命でも、映像作品の原版権は製作会社に帰属していて、その版元が倒産していたり、会社は存続していても作品を作っていた映像部署がなくなっているなどで、担当者不在となり、原版の所在を把握している者が居なくなっていて、引き取り手を失ったフィルムが破棄されるケースが結構あるんです。

そんなご時世なので、作品の原案・監督としてはとても有難い知らせでした。
『妖刀伝』は私の初監督作品ですし、キティ・フィルムから独立された宮田さんが、J.C.STAFFを立ち上げられた黎明期の作品で、まだJ.C.STAFFが杉並区の松庵に、プレハブ事務所を仮設されていた頃から企画が動いていました。
その後、会社の規模が大きくなるにしたがってJ.C.STAFFは三鷹に移転し、さらに現在の武蔵境に移転されました。

J.C.STAFFと私の関りはOVA作品を中心に制作されていた三鷹時代がメインでしたが、『薄桜鬼』の美術を手伝っていただいたり、間接的には今でもお世話になっています。

——『妖刀伝』を手がけられるまでの活動内容を教えて下さい。

ヤマサキ:私が熊本県立熊本工業高校を卒業した年、同校のアニメーション同好会で親しかった2年上の先輩(渡辺浩さん)がすでにスタジオライブで原画マンとして活躍してたんです。私たち同好会の後輩にとっては憧れの存在ですよ(笑)
……で「先輩みたいになりたい!」とアニメーターを目指して上京したんですが、力不足でアニメーターに成れたのは翌年の正月からでした。

以後、中村プロ、カナメプロを経てフリーになるまで、現場でアニメ制作のイロハを学びつつ、『ダーティーペア』や『超獣機神ダンクーガ』のTVシリーズに原画マンとして関わる中で、南町奉行所の創設メンバーである大貫健一さんや鶴山修さん、西井正典さん、大張正己さんたちと出会い、一緒に仕事をするためのフリースタジオとして『南町奉行所』を設立したという流れです。

——『妖刀伝』企画のきっかけと、制作にいたる経緯はどのようなものでしたか?

ヤマサキ:『南町奉行所』設立して間もない頃、かつて所属していたカナメプロ初代社長の相原義彰さんが独立しアニメの企画会社を作られ「ビクターがOVA作品の企画を探しているんだけど」と相談を受けたんですよ。

そこで、学生時代からやりたかった忍者モノのアニメ企画を大貫さんにデザイン協力してもらい『戦国奇譚 妖刀伝』として企画書をまとめ、日本ビクターに提出した事が『妖刀伝』制作のきっかけです。

私と大貫さんはすでに日本ビクターのVHD※作品『アニメビジョン』の中で連載されていた『コスモス・ピンクショック』で作画監督としてビクター作品に関わっていた経緯もあったからなのかもしれませんが、『コスモス・ピンクショック』の後作品として『アニメビジョン』の連載作品として『妖刀伝』を制作する事になりました。

その時に制作会社として紹介されたのがJ.C.STAFFだったわけです。
※VHD:1980年代にリリースされたビデオディスク規格。日本ビクター(現JVCケンウッド)開発

——『妖刀伝』制作・発売時のエピソードを教えて下さい。

ヤマサキ:当初、『妖刀伝』は40分4本シリーズの作品として動き出したのですが、第一作である『破獄の章』の発表直後はあまり評判が良くなかったようで、制作途中で「3本でまとめてもらえないか」とビクターから相談され、急遽後半を詰める形になりました。

ところが関西の読売テレビの番組『アニメだいすき!』で放送された事がきっかけで、関西から人気が出てきたらしいんですよ。

そして最終章である『炎情の章』の制作に取り掛かったころ「やはり4本構成に出来ないだろうか?」との問い合わせをいただいたのですが、すでに3本構成にシナリオを修正していて「今更もう1本増やすのは難しい」と言う事で、代わりに総集編の形で新作シーンを追加しつつ90分に纏めた『妖刀伝 劇場版』が作られたのです。

最終章がやたらと駆け足感が有るのはそういった事情があるためです。

——『妖刀伝』は監督のキャリアの中でどのような作品だったのでしょうか。

ヤマサキ:私にとっては初監督作品で初のオリジナルアニメでした。プロの演出家としてのキャリアも全くなく、アニメーターとしてもまだ4~5年程のキャリアしかなかった自分に、1本数千万円の制作予算を付けてもらって監督を任せて頂けたのは、今では考えられない英断を小松さんたちがしてくださったのだと頭が下がる思いです。

逆に言えはこの作品がヒットしていなければ、私のその後の監督人生は無かったかも(笑)です。

振り返ると20代はOVAブームがあり監督をいくつも依頼されたこと、その後のゲームブームでは『3×3EYES』をはじめとするゲーム制作協力のオファーが絶えなかったこと、テレビシリーズの『ギャラリーフェイク』や『地球へ…』の監督を任せてもらえたこともまた、『妖刀伝』の実績があったからだと思うんですよね。

——監督の手がけた作品には、女性ファンが多いものも数多く存在します。『妖刀伝』も「男装の麗人」的な主人公。そうした作品を作る際に、なにか意識していることがあるのでしょうか。

ヤマサキ:実は今まで女性向けを意識して作品を作ったことはないんです。性別とは関係なく、面白い作品は誰が見ても面白いはずで、唯一気にかけているのは「面白さはユーザーの知識量に依存する」と言う点くらいです。

時代もありますが潤沢な予算で作品を作れる環境が多くはなかったので、作画や画面の派手さで魅せる事がなかなか出来なかったんです。じゃあどうすると自分に問いかけ、ストーリー性やカット割りのリズム感でどうやって面白く演出できるかを常に考えていました。

また、庵野監督の話を聞いて同じことを思ったんですが、いま60歳前後の我々の世代は男性でも結構な量の少女漫画を読んでいた人たちが少なくないんですよね。
『地球へ…』でお世話になった竹宮恵子先生をはじめとして、萩尾望都先生や里中満智子先生、一条ゆかり先生、美内すずえ先生、くらもちふさこ先生……などなど本当に素晴らしい。学生時代には作品を貪り読んでいました(笑) その影響がいまの私のベースにあるのでしょう。

ひとつ思うことは、当時の少女漫画はジャンルのバリエーションが広く『少女漫画=恋愛漫画』ではなかったんです。和田慎二先生や柴田昌弘先生、弓月光先生など男性漫画家も少女漫画誌で作品を連載されていました。その中で『友情・努力・勝利』と言った少年漫画の王道パターンに捕らわれない、様々な作品の洗礼を受けた10代を過ごした結果が自分の感性を磨いてくれたんだと思います。

それが今、女性の心に届く作品作りに活かされてると思うと嬉しいですね。

——最後に、『妖刀伝』以降のこれまでと、監督のキャリアにおける『妖刀伝』の「意味」を教えていただけますか?

ヤマサキ:『妖刀伝』が私の最初の代表作になった事で「山崎さんは時代モノが好き」とか「歴史群像劇が得意」というイメージがついたようで、その後の『薄桜鬼』等に繋がって行っている気がします。

また、『妖刀伝』のファン層に女性ファンが多かったお陰で、女性向けアニメの監督依頼も増えました。
特に『妖刀伝』発表当時のアニメファンは圧倒的に男性ファンが多く、「ロボットと美少女が出ないアニメはヒットしない」的な言説がまかり通っていて「1本1万円近くするアニメビデオなんて女性は買わない」と実しやかに言われていました(笑)

そんな中でのヒットだったので、『妖刀伝』は製作企画現場の常識を結構変えた作品になったと思います。

この作品以降、現場的には少年漫画を読む女性が結構いる事も判ってきて、さらに女性ファンに支持されることが作品のヒットする大事な要素になったと思います。

——ありがとうございました。

「アニマン祭 J.C.STAFFの歴史を作った傑作たち」は2024年2月11・12日に開催されます。『妖刀伝 劇場版』はイベントのオープニングとなる第1部で上映。会場では、プロデューサーをつとめたJ.C.STAFFの宮田知行代表に、たっぷりとお話をお聞きします。
「アニマン祭」はまだまだ応募受付中。是非ふるって応募して、デジタルリマスターされた『妖刀伝 劇場版』を大画面で堪能して下さい。

応募はこちらから

<開催概要>
主催:アニメノマンガノムサシノ実行委員会(武蔵野商工会議所/武蔵野市観光機構)
協力:株式会社ジェー・シー・スタッフ
開催日時:2024年2月11日(日/祝)・2月12日(月/振替休日)
11日・第1部14:00〜16:00 第2部17:30〜19:30
12日・第3部12:30〜14:30 第4部16:30〜18:30
開催場所:武蔵野スイングホール(JR中央線・西武多摩川線 武蔵境駅 徒歩2分)

応募方法

入場無料。公式HPの応募フォームに参加希望日時/住所/氏名/年齢/電話番号/メールアドレス等の必要事項を選択・記入して下さい。応募者多数の場合は抽選といたします。なお、発表は当選者の方への当選通知をもって代えさせていただきます。

応募期間:2023年12月15日(金)~2024年1月31(水)最終締切

当選発表は、随時メールでお知らせします。
当選された方は当選メールを印刷、またはスマートフォンなどでご提示の上、入場願います。
座席は抽選での指定席制とさせていただきます。座席番号は当選メールに記載いたしますので、必ずご確認ください。

■個人情報の取り扱いについて
●個人情報の利用目的:個人情報は当主催者のサービス情報を提供目的のために使用します。 ●個人情報の第三者提供:応募フォームから取得する個人情報を第三者に提供することはありません。 ●個人情報の開示等及び苦情・相談の受付窓口について:個人情報の開示等(利用目的の通知、開示、内容の訂正、追加又は削除、利用の停止、消去及び第三者への提供の停止)及び苦情・相談につきましては、下記連絡先までお申し出ください。

武蔵野商工会議所 アニマン祭運営事務局
担当:池田/小泉 0422-22-3631
gyoumu@musashino-cci.or.jp

 



武蔵野スイングホール
〒180-0022 武蔵野市境2丁目14番1号
電話番号:0422-54-1313
JR中央線・西武多摩川線 武蔵境駅北口下車 西へ徒歩2分
nonowa口(Suica専用改札)下車 徒歩1分


武蔵野市のマンガ・アニメ最新情報情報等を発信していきます。
まずはLINE公式アカウントに登録!

©フライングドッグ/©ビーパパス・さいとうちほ/小学館・少革委員会・テレビ東京/©羽海野チカ/集英社・ハチクロ製作委員会/©附田祐斗・佐伯俊/集英社・遠月学園動画研究会4/©あずまきよひこ/アスキー・メディアワークス/あずまんが大王製作委員会/©鎌池和馬/冬川基/アスキー・メディアワークス/PROJECT-RAILGUN/©押切蓮介/SQUARE ENIX・ハイスコアガールⅡ製作委員会/©高橋弥七郎・メディアワークス/『灼眼のシャナ』製作委員会/©2006 ヤマグチノボル・株式会社KADOKAWA メディアファクトリー刊/ゼロの使い魔製作委員会/©竹宮ゆゆこ/アスキー・メディアワークス/「とらドラ!」製作委員会