アニメノマンガノムサシノ

ANIMAN REPOART アニマンレポート ANIMAN REPOART アニマンレポート

ラジオアニマンムサシノ第6回収録現場レポート

今回のゲストはSTUDIO 4℃の佐野雄太監督。制作が始まったばかりの新作アニメ映画『Future Kid Takara』についてお伺いしました。

第六回を迎えた「ラジムサ」。今回も大物クリエイターをゲストに迎え、浦尾さん、田中さんは興味津々? おなじみの収録風景をリポートします。

2023年1月中旬、『ラジオアニマンムサシノ』収録が吉祥寺で行われました。今回は、2023年1月10日に制作開始がアナウンスされた、STUDIO 4℃の新作アニメ映画、『Future Kid Takara』の監督である佐野雄太さんにお越しいただきました。みきちー(蔵境三吉)を演じる浦尾岳大さん、ショーヨー(武寺祥鷹)を演じる田中健大さんともに、今日はちょっと真面目なお話しに興味津々?

佐野監督が手がける『Future Kid Takara』、2025年の公開に向けて制作がスタートしたばかり。2025年とは「地球環境の保全のために、脱炭素化社会を一定レベルまで構築しないと手遅れになる」といわれる「リミット」の年です。これにあわせ、『Future Kid Takara』は、環境問題をテーマとし、アニメ制作の現場でも、環境に配慮した制作体制に取り組んでいます。佐野監督のインタビューの前に、まずはいつも通りに収録後の感想からどうぞ。

——お疲れ様でした。今回はテーマがいつもと違いましたね。今日は面白かったですか?

田中:いや、めちゃくちゃ面白かったですね。佐野監督は、教職免許をもっているとお話ししていましたが、だからなのかな。「おもしろい講義」を聞いた感じがしています。わかりやすく色々なお話しを聞けました。録音していない時にも、かなり難しい宇宙の話などをしてもらえたのですが、これがかみ砕いてわかりやすく教えてもらえて。

浦尾:興味を持ちやすく話してくれましたね。監督が学んできたことを、次の映画『Future Kid Takara』にぶつける、とおっしゃっていました。あの感じで制作してもらえたら、難しい話もしないと説明出来ないこともある環境問題も、映画を観れば、みんなが「自分の問題」だと認識出来るんじゃないか。そういう期待感がすごかったです。

田中:そこも含めて、監督の「生き様をぶつける!」という気迫がひしひしと感じられましたね。

浦尾:アニメ関係としては、「新しいタイプ」の方と出会えたな、と思いました。

——いわゆる、アニメ制作の「職人」タイプとは違う方でしたね。

田中:そうですね。アニメ以外の色々なお話しを聞かせてもらいたいな、そう思わせてもらえる方でした。

浦尾:アニメだけじゃなく、色々なことにアンテナを向けている方ですね。作品作り以外の事にも興味を向けていて、それが作品作りに活かされているのかなあ。

——昔から「良いアニメを作りたかったら、アニメ以外の作品を読んだり観たりしなさい」と、よくいわれてきました。これは漫画でも小説でも同じ事がいわれています。

田中:それが自然にできているんですね。

浦尾:でも、お話しを聞いていて、これまで学校で学んできたことを自分は活かせていないなあと(笑)

田中:そんなことないでしょ~(笑)

——いやあ、反省会みたいになってしまいました。では、通常パートのお話も。

浦尾:吉祥寺の聖地(?)「みんみん」に行ってきましたよ~。

田中:数々のクリエイターのお腹を満たしてきたといわれる餃子の名店ですね。

——僕らも昔から「みんみん」には良く行きましたが……。最近オジサンになってしまった僕らは、もうセットを食べられなくなってきました(笑)

浦尾:確かにボリュームがありました! 僕がチャーハン、田中さんがラーメンで、餃子を一皿ずつ頼んだのですが……。まあまあ苦しかったです(笑)

田中:僕は中華が大好きで、餃子なんかしょっちゅう食べていますが、大きいですよね! あのお店の餃子(笑)

——あのお店は、1970年代からあって、1980年代にはビンボーなクリエイターが集まるお店になっていたといわれています。

浦尾:そんなに前から!

田中:最近は、もう行列が出来ていると聞いていましたが、僕らはたまたまスムーズに入れて。でもおいしかったですね。

——「みんみん」を体験したら、もうおふたりは完全に武蔵野市のクリエイターの仲間入りです(笑)今日もお疲れ様でした。

佐野雄太:アニメーションディレクター、3Dアニメーター、CGIアーティスト。『映画 えんとつ町のプペル』(2020)ではアニメーション監督、『ベルセルク 黄金時代編 MEMORIAL EDITION』では監督を務めた。

佐野雄太さん収録後コメント

——ゲスト出演お疲れ様でした。

佐野:ありがとうございました。こういう機会はほとんどなかったので、ちょっと緊張しましたね。

——まず、『Future Kid Takara』はどういうお話しになるのでしょうか。

佐野:まだあんまりお話しできる段階ではないのですが……。まず「Future Kid」ですので、その通りで「現代の少女(ヒロイン)が未来の世界を体験する」というお話です。「Kid Takara』は未来の少年ですね。未来の世界で二人が出会い、冒険をする。よくある設定ともいえますが、やはり王道でいきたかった。

最近のアニメは、複雑なストーリーのものも多いのですが、一回原点回帰というか、楽しく、わくわく観られる冒険活劇を展開しつつ、テーマとしてはしっかりしたものを入れていく方向を目指しています。難しいテーマをエンターテインメントに落とし込むにはどうすればいいか、それを今練り上げているところですね。

——『Future Kid Takara』は、作品のテーマだけではなく、実際の制作体制から脱炭素化(カーボンフリー)に取り組まれるということですが。

佐野:そうですね。環境問題に興味をもってもらう作品が、環境破壊に率先して加担するのはどうかと(笑)まずは、ラジオ本編でもお話ししましたが、アニメ制作で大量に消費される「紙」を削減し、大きな電力を消費するコンピューターの使い方にも工夫をする。現場としてはここから始めています。

——これから取り組みたい課題やアイデアなどはありますか。

佐野:試行錯誤の段階ですので、なかなか具体的には……。こうした取り組みは、いままで何十年もの蓄積があるものを変えていくことになるので、本当に難しいんです。アニメの制作にあたっては、先ほど削減を目指している紙が数多く使われるのですが、この紙質を変えて、少し薄いものにするだけでも難しい。わかりやすくいうと、動きを見るためにパラパラとめくる紙の厚さが変わるだけで、正確な時間を計るのが難しくなったりします。何十年もかけて、その「使いやすい紙の厚さ」をみんなで探してきたものなんだから当然ですよね。

第一段階として、紙の削減には取り組んでいますが、今まで紙に絵や図を描いて制作することに慣れていますので、イメージを伝えるのが困難になったり、発想がわかなくなったり、紙を使わないとさまざまな問題が出てきます。その結果、作業効率が悪くなって、逆に省エネではなくなってしまう、といったことが、もうすでに起こっています。むしろ、今まで通りに紙を大量に使った方が省エネにつながるなんてもともあり得ます。

——「産みの苦しみ」的な現象は、もう起こっているのですね。

佐野:ただ、それもこれもやってみないとわからない。また、カーボンフリーに取り組むんだ、という意識があった上で、むしろこれまで通りのやり方のほうが良いという結論に辿り着いたりすること。それこそが、本当の意味での「環境に配慮した体制」作りにつながります。そうすると「ここは今まで無駄が多かった」「ここは変えられない」といったことがわかってきます。それを理解することが、まずは第一段階になると考えています。

——そうした「軸」が見えてくれば、次のステップに進めると。

佐野:そうですね。まずは「環境問題に配慮した制作」体制を作るという、「行動」を始める。そこで解ってきた軸を元に、次のアイデアを検討出来るようになる。そうした段階に今はいます。

——そういった取り組みを進めつつ、今回の作品は2025年という、動かすことの出来ない〆切があります。正直プレッシャーはありませんか。

佐野:あるにはありますが……。ただ、僕ら作品作りの人間は、基本的には「その時間の枠内」で最善を目指すことしか考えていませんので、そこまで激しいプレッシャーは感じていません。プロデューサーなどの職種のみなさんは、そうとうキツいと思いますが(笑)

ただ、ここまで厳然たる〆切があると、身が引き締まるのは事実です。緊張で眠れない日々がこれから待っているというか……、ただ、作業が多すぎて眠れないのなら、まだマシですね。

——といいますと。

佐野:むしろ今が緊張で眠れないです(笑)現在は作品の基礎をつくる準備段階。まだ動き出していないことが多い。動き出してしまえば大変は大変ですが、不安はない。やるだけです。でも今は、決まっていない事も多くて不安ばかりですね(笑)

——そんなタイミングでお時間をいただきまして申し訳ありません。

佐野:いやいや、まだできることが少ない段階ですので(笑)今年の春くらいには、ある程度次のステップに移れると思いますので、そこまではきっちり必要な段階を踏んで、一歩一歩進んでいきたいと思います。

——今日はありがとうございました。続報をお待ちしております。

『Future Kid Takara』については過去記事をご覧ください