浦崎宣光制作本部長に聞くスタジオディーンの作品たち
来月に迫った「第3回アニマン祭」。今年は吉祥寺に社屋を構えるスタジオディーンとのコラボイベント。今年50周年を迎えるスタジオディーンが制作した傑作の数々を観ながら、その歴史をたどっていきます。
今回のインタビューでは、同社の浦崎宣光制作本部長をお招きし、上映作やスタジオディーンのこれまでをお聞きします。
——本日はよろしくお願いします。浦崎本部長は、制作畑を歩んでこられました。アニメーションプロデューサーを長く務め、現在ではスタジオディーン作品の根幹を管理されています。まずここでは、アニメーション制作スタジオにおける「制作」とは、どのようなお仕事なのかをお聞きしたいと思います。
浦崎宣光(以下 浦崎):制作は、全工程の予算、スケジュール、人材の管理が主な仕事です。役職には、「設定制作」「制作進行」「制作デスク」「プロデューサー」等々があります。
僕は、制作進行としてスタジオディーンに1992年に入社して、OVAの手伝いから始まって、グロス請け作品等の制作進行を経て、1995年に「少年サンタの大冒険!」という作品で制作デスクになりました。そのころになって、やっと制作という仕事がわかってきた気がします。
80年代・90年代の代表作『めぞん一刻』『逮捕しちゃうぞ』
——ここからは「第3回アニマン祭」の上映作品についてお聞きします。まずは仕上げスタジオから制作会社になった初期のスタジオディーンといえば高橋留美子作品。その中から、2月末のイベントと言うこともあって『めぞん一刻』を選ばせてもらいました。
浦崎:『めぞん一刻』は僕が入社する前の作品ですので、放送当時は、視聴者として観ていた作品です。原作もいちファンとして読んでいましたが、素人ながら本作のような(SFや特殊なアクションがある作品ではない)人間ドラマが、アニメで制作されることに新鮮さを感じた記憶があります。身の回りの「子供やアニメファンではない」人たちにも訴求している作品だったと思います。
——次は1990年代のスタジオディーンを代表する『逮捕しちゃうぞ』です。
浦崎:このOVAには、僕は制作として関わってはいないのですが、撮影監督から、「雨の滴が走行中の車の窓を流れていくカットは、窓のエアブラシを少しずつ削りながら撮影した」ということを聞いて、TVシリーズとOVAとの手間のかけ方の違いを実感した作品です。
個人的な見解ですが、それまでのアニメ制作者は、実写映画や漫画の代わりとしてアニメ業界に入ってきた人が多かったのが、この頃から、1960年代生まれの元々アニメが好きでこの世界に入ってきた人たちが、監督などのメインスタッフとして作品に関わられるようになってきた、世代交代の時期だったと感じています。スタジオディーン作品では、このOVA『逮捕しちゃうぞ』がそれにあたるのではないでしょうか。