浦崎宣光制作本部長に聞くスタジオディーンの作品たち
細やかな描写が光る『薄桜鬼』と『昭和元禄落語心中』
——そしてついに、今回大フューチャーさせてもらいましたTVアニメ『薄桜鬼』となります。浦崎さんは、TVアニメ『薄桜鬼』ではシリーズを通してアニメーションプロデューサーをされています。先日行いましたヤマサキオサム監督のインタビューでは「第1期の最初の頃は苦労した」とのことでしたが。
浦崎:原作のゲームはフィクションですが、史実との整合性を重視して緻密に作られている作品だったので、歴史に詳しく且つドラマをしっかり作れる方ということで、ヤマサキオサムさんに監督をお願いしました。それから原作の耽美なキャラクターを再現できる方ということで、中嶋敦子さんにキャラクターデザインをお願いしました。僕のやった仕事はここまでですので、僕は苦労してはいないです(笑)
——ちなみに、アニメ化に際しての反響はいかがでしたか?
浦崎:時期的に女性向けゲームを原作としたアニメ作品が出始めた頃ですが、その中でも「薄桜鬼」は原作自体が桁違いの人気作品だったので、たくさんの方に観ていただけた印象です。TVシリーズだけでなく、劇場版やOVAなども作ることができたのも、ヤマサキさん、中嶋さんのおかげなのはもちろん、作品が好きで制作に携わってくれるスタッフがたくさんいたことが、良かったのだと思います。
——最後に、発表年次としては最も新しい2016年の『昭和元禄落語心中』です。先ほど『めぞん一刻』に関して「アニメにする作品なのか?」というようなお話がありましたが、この『昭和元禄落語心中』はもっと難しい作品だと思います。どうやって作ったのですか?
浦崎:落語の名人を落語の名人に見えるように表現する、ということにプレッシャーを感じた作品です。特に演出とキャストの難易度が異様に高い。キャストのオーディションも、本編から抜き出した台詞をしゃべってもらうという従来の形ではなく、音響監督の提案で「落語を一席やってもらおう」ということになったので、声優さんには大変な苦労をおかけしました(笑)
——また、落語を表現するには、噺家の「動き」も重要です。
浦崎:これも「がんばって描いてもらった」としか(笑) こんな挑戦的な作品によく参加してくれたなぁと。監督始めスタッフみんなに感謝しています。
——普通に「アニメを観る」とわからないかもしれませんが、これこそが老舗の大手スタジオの技術力、といえる作品だと思います。アニマン祭では、ぜひ細部にまで注目して『昭和元禄落語心中』を観ていただきたいと思います。
次の50年を続けていくために
——最後に、創立50周年を迎えるスタジオディーンのこれからについて教えて下さい。
浦崎:仕上げ会社からスタートして、制作・作画・撮影・CG・編集まで一貫してできる制作会社になり、いまも少しずつですが規模を拡大できております。ここまでこれたのも、視聴者の皆様の支えがあってこそと思っております。ありがとうございます。
今後も50年の経験を活かしつつ、様々な新しいジャンルの作品にチャレンジし、スキルを高め続け、アニメを通じて視聴者の方の生活に感動やインスピレーションを与えることができる会社になっていきたいと思っております。
——ありがとうございました。