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クリエイターインタビュー 第3回 後編 株式会社スタジオディーン 代表取締役 池田愼一郎

自分の限界を知っていることの優位

⸺他に取り組んでいる課題は何かありますか?

池田:あとは、どれだけ必要なセンスを持った人を、そのセンスが生きる場所に投入出来るかですね。そのセンスを身につけるために「インプット」が必要なのですが、せっかくのセンスも、活かせる場所にその人がいないと活きてこない。

実は、新型コロナウイルスのパンデミックの時期に、おもちゃの事業にかんしての話なのですが、これまでで初めて「会社の規模を縮小しなければならないかもしれない」と悩んでいたのですね。全般的に消費が冷え込んでいましたから。でも、そういう話をしようとしたら、おもちゃの事業で、とある作品のグッズがものすごく売れていて人出が足りないと。暗い気分で「リストラを……」という話をしようと思ったら「バイトでもなんでもいいので人を入れてくれ」という話をされました。

これは単純には嬉しい話ではあるのですが、要するに僕には見えない部分の市場があるということなんです。でも、会社ですから、そこにマッチする人材を投入すれば良い話。僕はその作品のことを全然知らなかったので、タイトルを聞いても最初は覚えられなかった。こういう経験が山ほどある。だから「自分がわからないことがある」ということを、ちゃんと認識できているとは思います。

つまり、最新の企画に対しては、若いスタッフに任せた方が効率的ということ。僕のような邪魔者が介入してはならない(笑)昔から「若い奴は責任感がない」なんていわれてきましたが、そんなことはない。ただ「責任を感じなければならない」ポイントが解っていないだけのケースが多い。そこだけフォローすればいいんです。

同様に、企画においてはベテランのスタッフが口を出しすぎると上手くいかないことも多い。そうしたところも、うまく伝えていきたいですね。

⸺世代差のようなものも感じますか。

池田:実際問題としては、というか傾向としてはありますね。だから、若い人向けのマーケットに向けた商品だったら、できるだけ近い世代のスタッフに任せています。どんなに優秀なベテランでも、世代が違うとセンスが合わない場合はあるんです。全員が全員そうだというわけではありませんがね。

⸺では、実績のあるスタッフが不要になってしまうのでは。

池田:そんなことはありません。当然、大人向けの作品や、長く続いているコンテンツにかかわるものであれば、ベテランでないとできないことは多い。若いスタッフでは足りないこともあるし、若い感性がかえって作品の良さに邪魔となってしまうこともあり得る。それを認識した上で、若いコンテンツにベテランを補助で入れたり、大人向け作品に、少しだけ若い世代を投入したりといった工夫をできるのがベストでしょう。

こういうことがわかったので、僕自身は「経営」に注力するようにしています。おもちゃにしろ、アニメにしろ、ただ作品を作っているだけでは成り立たない。それこそ、社会や景気、為替の動きや国際情勢にも左右される。そういう部分を、僕が受け持って、作品作りには口を出さない。これが重要だと思っています。

だから僕の役割は、売れるか売れないか、評価を得られるか得られないかを判断することじゃない。それは、センスがある人間、知識のある人間に任せなければならない。それ以外の、お金の流れや規模、調達など、現場ができないことが僕のフィールドです。

⸺今日はありがとうございました。

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